犯罪がバズる時代...。
SNSに自らの悪事を投稿する者たちが止まらない。
2022年オークランドのゴーストタウン・ギャングのメンバーは
奪ったばかりの財宝を抱えて満面のドヤ顔を晒した動画を Instagram や YouTube に投稿した。
そして映えを優先したその行為こそが、彼らを連邦刑務所という名の墓場へと導いたのである。
場所はカリフォルニア州オークランド。黒人革命組織『ブラックパンサー党』の発祥地としても知られるこの街には、ギャング暴力と貧困の連鎖という長年の歴史的闇が存在している。
中でも治安が極めて悪いとされる ウェストサイドのHoover-Foster Historic District(フーバー・フォスター歴史地区)、通称『ゴーストタウン』は特に荒廃した地域である。その名の由来は諸説あるが、1990年代のクラック・コカイン流行(crack epidemic)に伴う暴力、失業、人口流出によって“幽霊の出るような空虚な町”へと変貌したことに由来すると広く考えられている。
『ゴーストタウン』の地元ニックネームをそのまま名乗る Ghost Town Gang は、長年この地域に根を張る悪名高いストリートギャングである。
彼らは同じWest Oakland内の近接した公共住宅プロジェクト、Acorn housing projects を拠点とする Acorn Projects(Acorn Mob / Acorn Gang) と激しい対立関係にある。もともとは強い同盟関係にあり、互いの縄張りを尊重し合っていた両クルーであったが、2006年6月30日のある出来事で関係は一変した。
地元住民の葬儀の終盤、Ghost Townの Aaron Burrell は、かつてgod-brother(育ての兄弟のように親しい男友達)と呼んでいた AcornのMarquis Burton が 自分の車(クロームリムのBuick) を盗んだと激しく非難したのである。口論は一気に激化し、両サイドの仲間が集結、やがて大規模な乱闘へと発展した。
葬儀後のキャンドルライト追悼集会の場で、30発以上の銃声が鳴り響いた本格的な銃撃戦である。この出来事によって、かつての同盟関係は完全に崩壊した。
この銃撃戦に関与した一人として後に逮捕されたのが、地元では伝説的なストリートフィギュアとして知られる Mac Blast である。2008年のAcornへの大規模捜査で起訴され、2010年に懲役48年の刑を言い渡され、現在も服役中である。
車を盗んだ盗んでないの口論から始まった争いは、同盟ですら引き裂く激しい抗争へと発展した。その結果、長年にわたる報復殺人やドライブバイ射撃が繰り返され、ウェスト・オークランドの殺人率を押し上げる最大の要因の一つとなった。また、Ghost Town Gangは Case Gang との対立も続き、オークランド全体の治安悪化に拍車をかけたとされている。
・ギャング文化の特徴
オークランドの黒人ギャング、とりわけWest Oaklandの地元密着型ギャングは、Los Angelesのような Crips(青) / Bloods(赤) の大規模セットの影響を強く受けない傾向がある。明確な統一色(colors)を主張せず、地元住民と同じく Oakland A’s のキャップなどを被るなど、服装やシンボルで目立たない傾向がる。
グラフィティやタトゥーでは「Ghost Town」「GT」「Hoover-Foster」関連のタグやゴーストの絵が描かれたりしている。
・連邦捜査の対象となった強盗計画
当局によれば、Ghost Town Gangは長年にわたり麻薬取引、殺人、路上強盗に関与してきた。だが2022年、彼らはより大きな報酬を狙ったリスクの高い暴力的強盗に標的を定めたとされている。
この時の主要メンバーとして挙げられるのが、リーダーの デマルコ・バーネット(Demarco Barnett) と、これまでに30回以上逮捕歴のある『筋金入りの犯罪者』 ジャカリ・ジェンキンス(Jakari Jenkins) である。彼らの犯行手口は大胆かつ冷酷であった。
【2022年の主な犯行】
3月18日、サンフランシスコのサウス・オブ・マーケット地区にあるコインショップで、店主とその息子に暴行を加え、結束バンドで拘束した上で銃を突きつけ、30万ドル超の金銭を奪った。逃走には盗んだナンバープレートを装着したレンタカーが使われていた。
11月12日にはサンパブロの宝飾店で偽客として下見を行い、後に複数人で押し入って宝飾品を奪った。被害額は50万ドル相当に上った。
12月24日(クリスマスイブ)には大麻販売店を襲撃。従業員を脅し、金品と大麻を奪ったうえ、店側の銀行デビットカードも奪取。盗まれたカードはサンフランシスコのモールで1000ドル以上使用された。
【当局の捜査とHobbs法の適用】
彼らの犯行は洗練されていたが、その裏で巨大な捜査網が静かに動き出していた。過去の殺人や麻薬犯罪、さらに複数都市にまたがる組織的犯行が明らかになったことで、当局は本件を 『ホッブス法(Hobbs Act)』 に該当する連邦犯罪と認定した。
ホッブス法は州間商業(interstate commerce)に影響を与える強盗や恐喝を対象とする強力な法律であり、当局はFBIと共同で高度な捜査を展開した。位置情報データ、ナンバープレートリーダー映像、現場に残されたDNAなどの証拠が積み重ねられ、逃走ルートが完全に突き止められた。
彼らは奪ったばかりの特注ジュエリーを身に付け、札束を振り回す動画をSNSに投稿していた。FBIはこれらの動画をすべて保存し、パーティー映像やメンバー同士のやり取りで「1回の仕事で$1,000もらった」といった発言までが捜査の重要な証拠となった。
【起訴と判決】
2024年8月、ベイエリアの連邦検察はゴーストタウン・ギャングのメンバー9人を共謀罪や複数の強盗罪で起訴した。
そして 2026年2月9日、最終的な判決が言い渡された。9人全員が共謀罪で有罪答弁し、うち8人が強盗を含む関連罪でも有罪となった。
- デマルコ・バーネット:9年半の実刑
- ジャカリ・ジェンキンス:8年の実刑
- その他メンバーも平均6〜7年の実刑判決
- Danny Garcia:84ヶ月(7年)
- Garland Rabon:75ヶ月(6年3ヶ月)
- Aramiya Burrell:70ヶ月(約5年10ヶ月)
- Lester Garnett:66ヶ月(5年6ヶ月)
- Darrin Hutchinson:60ヶ月(5年)
- Ricky Joseph:60ヶ月(5年)
- Keanna Smith-Stewart:50ヶ月(約4年2ヶ月)
合計刑期は約 709ヶ月(約59年) に達した。奪った宝石は全て没収され、被害者への賠償金 $150,338 が命じられた。仮釈放なし、善行減刑のみで軽減の余地があるにせよ、州法であれば仮釈放の可能性がある程度のカリフォルニア州刑とは違い、実質的に重い刑期が課せられたが、それでもカリフォルニア連邦裁判の裁量で、他の州の連邦事件に比べて相対的に抑えられた重さと言える。
彼らはフォロワーへの自慢が抑えきれず、自らの犯行を証拠として残した。あまりにも間抜けであり、しかし現代的でもあるその結末。結果として彼らが手にしたものは、派手な宝飾品や札束ではなく、鉄格子の向こうで過ごす年月となった。